「最後まで、ミリには勝てなかった。」
四季大雅『ミリは猫の瞳のなかに住んでいる』を読んだ感想をまとめました。 猫の瞳を通して異なる時間軸の二人が交流するという設定のもと、演劇部を舞台にした連続銃殺事件を描く本作は、読みづらさを感じながらも、読み終えたときには切ない満足感が心にじんわりと染み込んでくる読書でした 。
この記事ではネタバレなしのレビューと、折り畳み式のネタバレあり感想の両方を掲載しています。
この記事で分かること
- 『ミリは猫の瞳のなかに住んでいる』のネタバレなしレビュー
- 読んで感じた良かった点・気になった点
- ネタバレありの感想(後半に掲載)
⭐⭐⭐☆☆(3.5/5)
⭐ 結論
設定やラストシーンには惹かれるものの、要素を詰め込みすぎた構成のせいか読みづらさが目立ち、人を選ぶ一冊だと感じました。
👍 こんな人におすすめ
SFやミステリー、演劇要素が絡む複雑な設定の作品が好きな方、切ないラストに弱い方。
⚠️ 注意点
過去・現在・未来が入り混じる構成や独自ルールの説明が複雑なため、軽い気持ちで読みたい方には向かないかもしれません。
💭 読了後の第一印象
今回読んだのは、四季大雅さんの『ミリは猫の瞳のなかに住んでいる』です。
読んだきっかけは、軽く読めるものが読みたくてラノベを選んだことでした。
事前にジャンルを調べたところ「恋愛」「SF」「ミステリー」とあったので、そこまでガッツリしたミステリーではないだろうと思っていたのですが、読んでみると意外としっかりミステリーの作品でした。
設定自体はとても面白いと感じたのですが、複雑で場面が飛び飛びに感じられ、状況を理解するのが難しく、一幕の途中で読むのをやめようかと思ったほどでした。
読みづらさがあり、よく分からない部分もありましたが、本筋が理解できないということはなかったので、最後まで読んで良かったと思える作品でした。
切ない満足感のある作品だったというのが、率直な感想です。
内容自体は好きだったものの、それ以上に読みづらさの方が印象に残ってしまったというのが正直なところです。
📖 ネタバレなしレビュー
あらすじ
物語の舞台は、コロナ禍の影響が残る大学生活です。
主人公の大学生・紙透窈一(かみすきよういち)は、人や動物の瞳を覗き込むことで、その対象が過去に見た光景を追体験できるという特殊な能力を持っていました。
ある日、紛れ込んできた野良猫「サブロー」の瞳を覗いたことで、自分とは異なる時間軸にいる少女、柚葉美里(ゆずはみり)、通称「ミリ」と出会います。
ミリは窈一とは逆に「未来を視る」能力を持っており、猫の瞳越しに窈一の周りでこれから起こる衝撃的な未来を予言します。
それは、大学の演劇部を舞台にした凄惨な連続銃殺事件でした。
ミリから「探偵になって運命を変えてほしい」と託された窈一は、事件を未然に防ぐために演劇部へ潜入し、姿の見えない少女と猫の瞳を通じて交流を深めながら、複雑に絡み合った人間関係と残酷な運命の渦中に飛び込んでいきます。
👍 良かったところ
今風な設定とコロナ禍の閉塞感のリンク
「過去視」を持つ主人公と「未来視」を持つヒロインが、猫の瞳を介して異なる時間軸で交流するという設定が今風で良いと感じました。
この設定が、人と直接会うことが制限されたコロナ禍特有の閉塞感と上手くリンクしていたように思います。
詩的で美しい表現
詩的で美しい表現が多く、切ない感情や情景が心に深く染みました。
ラストシーンの余韻には感動しました。
演劇への高い熱量とリアリティ
「演劇」に対する高い熱量とリアリティを感じました。
舞台やエチュード(即興劇)の描写に臨場感があり、演劇の魅力が伝わってきました。
作中に登場する戯曲(作中劇)の完成度も高いと感じました。
終盤の展開の驚き
終盤の怒涛の展開は驚きの連続でした。
ミステリーとして嬉しい驚きがいくつも用意されており、読み終えたあとには「再読したら印象が変わりそうだ」と感じさせられる作品でした。
🤔 気になったところ
要素の詰め込みすぎで複雑
SF、ミステリー、演劇、青春、恋愛と、非常に多くの要素が一冊に凝縮されているため、理解するのにかなりのカロリーを使いました。
過去・現在・未来が入り混じる構成や能力のルールが難解で、途中で混乱してしまいました。
トリックや伏線回収の粗さ
一部のトリックや伏線回収が、他の要素に比べて雑に感じられ、ミステリーとしての完成度については評価が分かれそうだと思いました。
軽く読みたい時には合わない
ラノベを読む感覚でシンプルなエンタメを求めると複雑な内容に疲れるかもしれません。
軽く読みたい時には合わないと感じました。
引用の多さによるテンポダウン
演劇や古典文学に関する引用が多く、その辺りにあまり詳しくないため小難しく感じ、ややテンポダウンしてしまいました。
⭐ 総評
一言でまとめるなら、
「設定の面白さとラストの切なさが光る、読み手を選ぶSFミステリー」でした。
要素を詰め込みすぎた構成のせいで読みづらさを感じる場面が多く、一幕の途中では読むのをやめようかと思うほどでしたが、それでも最後まで読んで良かったと思える作品でした。
猫の瞳を介して異なる時間軸の二人が交流するという設定や、演劇への熱量とリアリティ、そして詩的で美しいラストシーンには惹かれるものがありました。
一方で、トリックや伏線回収のやや雑に感じる部分もあり、ミステリーとしての完成度は評価が分かれそうだと思います。
読みやすさよりも、複雑な設定や切ないラストを楽しめるかどうかで印象が大きく変わる作品でした。
⭐ 評価
| 項目 | 評価 |
|---|---|
| 読みやすさ | ★★☆☆☆ |
| ミステリー要素 | ★★★☆☆ |
| キャラクター | ★★★★☆ |
| 構成・世界観 | ★★★☆☆ |
| 読後の余韻 | ★★★★★ |
総合評価:⭐⭐⭐☆☆(3.5/5)
📚 こんな人におすすめ
✅ SF・ミステリー・演劇要素が絡む複雑な設定の作品が好きな方
✅ 過去・現在・未来が入り混じる構成にじっくり向き合える方
✅ 切ないラストシーンに弱い方
✅ 演劇や古典文学の引用にも興味がある方
✅ 一度読んだあと、再読して印象の変化を楽しみたい方
気になった方はこちらからチェックできます。
⚠️ ネタバレあり感想
※ここから先は『ミリは猫の瞳のなかに住んでいる』の結末や核心に触れる感想です。
未読の方はご注意ください。
ミリのことと、ラストについて語っています。
💭 ミリの正体が判明する衝撃
物語の最大の仕掛けである、窈一とミリの間に存在する「時間のズレ」には驚かされました。
窈一は現在を生きていますが、ミリは約3年前の過去の世界から猫の瞳を通じて窈一と会話しており、窈一が生きる現在においてミリはすでにこの世を去っているという事実が中盤で明らかになります。
さらに終盤、犯人の正体が判明したことに驚いていたのも束の間、千都世先輩が実はミリだったという事実が判明した流れは、特に印象に残りました。
💭 終わり方が好きだった
正直、読んでいる最中は「なんやかんや上手くいって二人が結ばれてハッピーエンドだろうな」と思っていました。
しかし、ミリが実は生きているというようなご都合展開はなく、自分が死ぬことで絶対に主人公を生かすのだというミリの決意と、そこにたどり着くまでの苦しい道のり、それらをすべて分かった上で最後のページで桜並木の中で微笑むミリのイラストで締められたことで、美しく切ない終わり方になっていました。
人によっては、もっと分かりやすいハッピーエンドの方がいいという方もいると思います。
ですが私としては、主人公はもちろん読者の私も最後までミリには勝てなかったなぁと心地よく騙されてしまい、切なくも満足感のある終わり方だったと感じました。
💭 演劇を利用した謎解き
演劇部で発生する連続銃殺事件の解決には、「演劇」そのものが重要な役割を果たしていました。
窈一たちは舞台上での演劇を利用して真犯人を騙し、これまでの殺人の証拠を自ら暴露させるという大胆な策を講じます。
この解決シーン自体がまるで一本の劇のように構成されており、読者をも欺く仕掛けになっていた点が印象的でした。
💭 互いを救おうとする「呪い」と「愛」
物語の核心にあるのは、「どちらかが生き残れば、どちらかが死ぬ」という過酷な運命でした。
未来を知るミリの助言を受けながら、窈一はミリが死ぬはずだった過去を変え、彼女を救おうと足掻きます。
しかし実際には、ミリは自分が助かれば窈一が死んでしまう未来を予見しており、自分が死ぬ運命を受け入れた上で、窈一を生き残らせ、彼が役者として「光」を掴む未来へと導くために、あえて情報を操作し彼を演じさせていたことが分かります。
タイトルにある「猫の瞳のなかに住んでいる」という言葉が、ミリが猫の瞳を通じて窈一を見守り続け、彼の人生という舞台の脚本家であり続けたことを象徴しているように感じられ、読み終えたあとも余韻が残りました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。



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