スポンサーリンク

『殺人事件に巻き込まれて走っている場合ではないメロス』レビュー|脳筋メロスが「フィジカル」で解決するパロディ・ミステリ

記事内に広告を含む場合があります。

「メロスは推理した。そして、殴った。」
五条紀夫『殺人事件に巻き込まれて走っている場合ではないメロス』を読んだ感想をまとめました。
太宰治の名作『走れメロス』を大胆にアレンジした本作は、道中で次々と殺人事件に遭遇するメロスが、持ち前の「フィジカル」で解決していくパロディ・ミステリです。テンポの良さと勢いに引っ張られ、気づけば一気に読み終えていました。
この記事ではネタバレなしのレビューと、折り畳み式のネタバレあり感想の両方を掲載しています。


この記事で分かること

・『殺人事件に巻き込まれて走っている場合ではないメロス』のネタバレなしレビュー
・読んで感じた良かった点・気になった点
・ネタバレありの感想(後半に掲載)


⭐⭐⭐⭐☆(4.0/5)

⭐ 結論
テンポが良すぎるほどの勢いで一気読みできる一冊でした。強引だと思う部分もありましたが、それも含めて再読したくなる作品です。

👍 こんな人におすすめ
『走れメロス』を知っている方、パロディやメタ的なギャグが好きな方、筋肉やフィジカルで物事を解決する展開が好きな方。

⚠️ 注意点
本格的な推理を期待すると物足りなさを感じる場合があります。また、原作の崇高な友情物語を大切にしたい方には、茶化されているように感じる部分があるかもしれません。



💭 読了後の第一印象

今回読んだのは、五条紀夫さんの『殺人事件に巻き込まれて走っている場合ではないメロス』です。

読んだきっかけは、ズバリ!!タイトルに惹かれたことでした。
読み終えてみると、タイトルのインパクト通りの物語だったと思います。

読んでいて一番に感じたのは、テンポが良いというより「良すぎる!」ということでした。
もはや勢いがすごい作品で、その勢いに引っ張られるようにページをめくっていました。

雰囲気としては、「走れメロス」から太宰治っぽさを引いて、福田雄一監督の実写映画のようにした感じだと思いました。パロディ感やシュールギャグで押し切る勢いのあるところ、メタい演出が多いところが、そのイメージに近いと感じました。

原作の「走れメロス」が好きな私としては、大半は面白く読めましたが、一部、これはちょっと違うかもしれない、と微妙な気持ちになる部分もありました。


📖 ネタバレなしレビュー

あらすじ

物語の骨格は『走れメロス』をなぞっています。
牧人メロスは、邪智暴虐の王ディオニスの怒りを買い処刑されることになりますが、妹の婚礼に出席するため、竹馬の友セリヌンティウスを身代わりに残して3日間の猶予を得ます。

しかし、故郷の村に戻ったメロスを待ち受けていたのは祝宴の準備ではなく殺人事件でした。
妹の婚礼前夜、新郎の父が「密室」状態の羊小屋で殺されていたのです。

一刻も早く王都へ戻らなければならないメロスですが、正義感の強い彼はこの事件を放置できず推理を開始します。
その後も、道中には山賊の死体や不審な溺死体など、次々と事件が立ちふさがります

メロスは「半分は正義の心、残りの半分はフィジカル(筋肉)」で構成された直情径行な男として描かれ、イマジナリーフレンドのイマジンティウスの助言を借りながら、持ち前のフィジカルを武器に事件を解決していきます。

👍 良かったところ

秀逸なネーミングセンス

登場人物には、役割や死因にちなんだ覚えやすい名前が付けられています。
妹はイモートア、婿はムコス、義父はギフス、目撃者はミタンデスといった具合で、カタカナの名前を覚えるのが苦手な私でも混乱せずに読み進められました。

フィジカルで解決する痛快さ

謎解きの過程よりも印象に残ったのは、緻密な推理よりも「フィジカル(物理)」で押し切ってしまう展開でした。
主人公メロスが持ち前の筋肉と勢いで事件に立ち向かっていく様子はシュールでバカバカしくも爽快で、思わずフフッと笑ってしまう場面が何度もありました。

知的な遊び心

古代ギリシアについて、なんだか詳しくなったような気になりました。
「ダモクレスの剣」は言葉だけ知っていましたが、今回初めて由来を知りましたし、『走れメロス』はハッピーエンドである一方、現実の都市国家シラクスは後に消滅してしまったことなど、物語の外側の豆知識も楽しめました。

🤔 気になったところ

メタ的な演出

著者が地の文で読者に語りかけたり、「これは叙述トリックである」とメタ的な発言をしたりするスタイルは、物語への没入感を削ぐと感じる人もいるかもしれません。
私自身はもともとメタ要素の多い作品として楽しみましたが、好みが分かれるポイントだと思います。

強引さを感じる部分

結末やトリックの一部には、強引だと思う部分もありました。ただ、それも含めて再読したくなる不思議な魅力があったように思います。


⭐ 総評

一言でまとめるなら、

「フィジカルこそが全てを解決する、勢いで押し切るパロディ・ミステリ」でした。

テンポが良すぎるほどの勢いで、気づけば一気に読み終えていました。
強引だと感じる部分や、原作パロディに対して微妙な気持ちになる部分もありましたが、それでも再読したくなる仕掛けがあり、総合的には楽しめた一冊でした。

筋肉好きは、読みましょう。


⭐ 評価

項目評価
読みやすさ・テンポ★★★★★
ミステリー要素★★★☆☆
ギャグ・パロディ★★★★☆
再読性★★★★☆
原作再現度への好み★★★☆☆

総合評価:⭐⭐⭐⭐☆(4.0/5)


📚 こんな人におすすめ

✅ 『走れメロス』を読んだことがある方

✅ パロディやメタ的なギャグが好きな方

✅ 難しいことを考えずにテンポよく読みたい方

✅ 筋肉や「フィジカル」で解決する展開が好きな方

✅ 古代ギリシアの豆知識を楽しみながら読みたい方


気になった方はこちらからチェックできます。


⚠️ ネタバレあり感想

※ここから先は『殺人事件に巻き込まれて走っている場合ではないメロス』の内容や結末に触れています。
未読の方はご注意ください!

トリックやパロディに対する想い、ラストについて語っています。

💭 第3話の叙述トリックが一番好きだった

第3話「メロスは奮闘した」で、山賊の仲間割れによる殺人事件が起きる場面は、特に印象に残りました。
滑車の原理や場所の誤認など、いろいろな推論を立てたのに、真相は単純な撲殺だったという展開に、力の抜けるような面白さを感じました。
それまで名前が伏せられていた人物が実は「ヒトゴロス」という犯人で、著者自身が「これは読者に名前を隠していた叙述トリックである」とメタ的に宣言するところも、勢いがあって好きでした。

ツッコミながら読むの面白かったです!

💭 太宰治パロディへの複雑な気持ち

第4話「メロスは入水した」で、太宰治がモデルの小説家オサムスと、檀一雄がモデルのカズオウスが登場する場面は、正直なところ解釈違いでした。
太宰の「熱海事件」や『人間失格』のパロディ(オサムスの著書が『人間合格』というタイトルになっているところなど)は、「これ知ってる」と思う面白さがある一方で、原作者本人が茶化される形になっているのは、やや冷めた気持ちで読んでいました。
もともとメタ要素の多い作品で没入感はあまり求めていませんでしたが、この章だけは少し温度差を感じました。

作品のパロディに原作者をだすのは個人的に微妙なような気がして…でも、まぁ太宰治さんってそのままでハチャメチャな面白い方なんですよね。

💭 イマジンティウスの正体という最大の仕掛け

本作最大の仕掛けはやはり、イマジンティウスの正体でしょうか。
メロスが道中ずっと「自分の妄想から生まれた幻」だと思い込んでいたイマジンティウスは、実は本物のセリヌンティウスだったという結末です。
読んでいる途中、メロスが知らないはずの現場の状況を喋っている場面などで
「ここ矛盾してるな~作者見逃しちゃってない?」と調子に乗っていたのですが、まさか幻ではなかったというオチには、やられました。
逆に、王城で人質になっていたはずのセリヌンティウスの方が、メロスの「信じる心」が生み出した幻だったという構図には、そんなのアリなのか?と思いつつも、再読したくなる魅力を感じました。

💭 プラトンとの決着

黒幕として登場する哲学者プラトンが、知性だけでなく凄まじい肉体を誇るマッチョとして描かれ、最後はメロスとの格闘によって決着がつく展開は、本作らしい「フィジカルこそが全てを解決する」という方向性を象徴していたと思います。
哲学者プラトンが実はレスリングの強者だったという史実を絡めているあたりに、知的な遊び心も感じました。
まさかこの物語にプラトンが黒幕として登場するとは思っていなかったので、その意外性も含めて楽しめたポイントでした。

最後は原作通り、メロスとセリヌンティウスが互いに殴り合い、友情を再確認して大団円を迎えます。
強引だと感じる部分はありつつも、フィジカルで押し切るこの作品らしい終わり方だったと思います。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました!!!

コメント