「謎は解けた、でも爽快感は一切ない。」
米澤穂信『栞と噓の季節』を読んだ感想をまとめました。
〈図書委員〉シリーズ第2作となる本作は、返却された本に挟まっていた一枚の押し花の栞をきっかけに、堀川次郎と松倉詩門が学校中に渦巻く「嘘」を暴いていく、前作以上にビターな青春ミステリでした。
この記事ではネタバレなしのレビューと、折り畳み式のネタバレあり感想の両方を掲載しています。
この記事で分かること
・『栞と噓の季節』のネタバレなしレビュー
・読んで感じた良かった点・気になった点
・ネタバレありの感想(後半に掲載)
⭐⭐⭐⭐☆(4.0/5)
⭐ 結論
登場人物や雰囲気は前作同様に好きでしたが、テンポや結末には物足りなさも感じました。それでも続きが出たら読みたいシリーズです。
👍 こんな人におすすめ
前作『本と鍵の季節』を読んだ方、米澤穂信らしいビターな読後感が好きな方、キャラクター重視のミステリが好きな方。
⚠️ 注意点
爽快感やハッキリした決着を求める方には、やや物足りなく感じるかもしれません。前作が短編集だったのに対し、今作は長編でテンポがゆっくりめです。
💭 読了後の第一印象
今回読んだのは、米澤穂信さんの〈図書委員〉シリーズ第2作『栞と噓の季節』です。
読んだきっかけは、前作『本と鍵の季節』が面白く、続けて読みたかったからです。
シリーズ第1作レビューはこちら↓
『本と鍵の季節』(米澤穂信)|爽やかでビター、図書室バディの青春ミステリ
読み終えての率直な感想は、「謎は解けた、でも爽快感は一切ない」というものでした。
米澤穂信作品にもともと爽快感は求めておらず、むしろ残るほろ苦さが好きで読んでいるので、その点は良かったのですが、ラストに関しては物足りなさの印象の方が強く残りました。
嘘を見破っていく過程や登場人物の掛け合い、新しいヒロインの登場など面白い部分もたくさんありましたが、正直、前作が相当好みで面白かった分、やや肩透かし感があったのも事実です。
📖 ネタバレなしレビュー
あらすじ
高校の図書委員を務める堀川次郎と松倉詩門の二人は、ある放課後、返却された本の中に、手作りの押し花の栞が挟まっているのを見つけます。
その小さく可愛らしい花が、実は猛毒を持つトリカブトであることに気づいた松倉は、持ち主を捜そうと提案します。
しかし、持ち主を捜す過程で、二人は校舎裏にトリカブトが密かに栽培されているのを発見し、さらには学校で嫌われ者だった男性教師が中毒症状で救急搬送される事件が発生します。
この栞は一体誰が、何のために作ったのか。
堀川と松倉は、同じく栞を追う同級生の美少女・瀬野麗と共に、学校中に渦巻く「嘘」を暴きながら真相に迫っていきます。
👍 良かったところ
図書委員コンビの絶妙な距離感と会話劇
堀川次郎と松倉詩門の、互いを信頼しきっているわけではない「近すぎない相棒関係」は今作でも健在でした。
ウィットに富んだ軽快なやり取りや、無意味でくだらない高校生らしい会話が、物語のアクセントになってたと思います。
「嘘」を剥ぎ取っていく緻密なミステリ構成
タイトル通り、登場人物の多くが何らかの嘘や隠し事を抱えており、それらが論理的な推理によって一つずつ暴かれ、見える景色が変貌していく過程には読み応えがありました。
魅力的な新ヒロイン・瀬野麗の登場
今作から加わった瀬野麗は、圧倒的な美貌と知性、そして複雑な内面を兼ね備えたキャラクターとして存在感がありました。
単純に、頭が良くて美人なヒロインが増えたのも嬉しいポイントでした!
可愛くて好き。
米澤穂信らしいビターで切実な青春描写
単なる爽やかな物語ではなく、社会的弱者としての少年少女が抱える苦しさや、自らを守るための物を必要とする切実な背景が、仄暗くリアルに描かれているところに惹かれました。
🤔 気になったところ
高校生離れしたキャラクター造形
登場人物たちの洞察力や語彙が極めて鋭く大人びているため、実際の高校生像とのギャップに違和感があるかもしれません。
個人的には米澤穂信作品って感じで好きでした。
物語のテンポと中盤の停滞感
前作が短編集だったのに対し、今作は長編であるため、場面の進行がまどろっこしく感じられたり、中盤の展開がゆっくりであることに「しんどさ」を感じたりする部分がありました。
結末の「投げっぱなし」感と物足りなさ
すべての事象に明確な決着がつくわけではなく、後日談が省略されていたり、長編の割には事件の着地があっさりしてたかなと感じました。
独特の重苦しい読後感
米澤作品特有の「小さな棘」が残るようなビターな結末や、学校という閉塞感の中での悪意の描写は、爽快感を求めるミステリファンにとっては好みが分かれると思います。
⭐ 総評
一言でまとめるなら、
「登場人物の魅力は健在だが、テンポと結末にやや物足りなさが残るビターな長編」でした。
前作『本と鍵の季節』が短編集としての完成度が高かった分、長編になった今作にはテンポの面で肩透かし感を覚える部分もありました。
それでも、堀川と松倉の関係性や、新たに加わった瀬野麗の存在感は魅力的で、登場人物と謎解き、雰囲気そのものは変わらず好きなシリーズです。
続きが出たら間違いなく読みたいです!でたら嬉しい!
⭐ 評価
| 項目 | 評価 |
|---|---|
| 読みやすさ | ★★★★☆ |
| 推理・構成 | ★★★★☆ |
| キャラクター | ★★★★★ |
| テンポ | ★★★☆☆ |
| 読後の納得感 | ★★★☆☆ |
総合評価:⭐⭐⭐⭐☆(4.0/5)
📚 こんな人におすすめ
✅ 前作『本と鍵の季節』を読んだ方
✅ 米澤穂信らしいビターな読後感が好きな方
✅ キャラクター重視のミステリが好きな方
✅ ハッキリしない余韻を残す結末も楽しめる方
✅ 堀川・松倉コンビの今後が気になる方
気になった方はこちらからチェックできます。
⚠️ ネタバレあり感想
※ここから先は『栞と噓の季節』の内容や結末に触れています。
未読の方はご注意ください。
印象的なセリフや結末、キャラクターについて語ってます。
💭 栞の正体と「切り札」
トリカブトの栞を最初に作ったのは、瀬野麗と、現在は転校してしまった友人の櫛塚奈々美でした。
彼女たちにとってこの猛毒の栞は、理不尽な大人や暴力的な支配に対抗するための、いざとなったら相手を殺せるという「切り札」であり、自らの心を守るための「お守り」だったのです。
一番印象的だったセリフは、
「お前が生きていられるのはわたしが生かしてやっているからなんだ」
自衛のための「切り札」を、使わないけれど持っておきたいと思う人は、特に中高生には多いのではないかと思います。
いや、大人も普通にほしいか。
たとえ現実には手出しができなくても、「その気になれば相手をいつでも殺せる」という全能感を心の拠り所にすることで過酷な現実を生き抜こうとする思いには、否定できないどころか共感を覚えます。
💭 「姉妹団」の広がりと主犯
瀬野たちがひっそりと持っていたはずの栞は、いつの間にか「姉妹団」という名前で、悩みを持つ女生徒たちの間に広まっていました。
この模倣品を作り、組織的に配っていた主犯は、図書委員の後輩・植田の彼女である和泉乃々実でした。彼女は櫛塚奈々美の妹であり、姉の意図を汲みつつも、より過激で自己顕示欲の強い形で「切り札」をばら撒いていたのです。
この「切り札」が犯人によって組織的にばら撒かれ、浅はかな自己顕示欲のために消費されたことで、瀬野の大切な「切り札」が踏みにじられたような憤りは、相当大きかっただろうと読んでいて思いました。
だからこそ、ラストに肩透かし感があったのかもしれません。
💭 結末について
犯人を逃がし、あとは「瀬野さんがあの毒花をどうしたのか、僕たちは知らない。」で終わってしまったので、米澤穂信作品らしい語りすぎない余韻は感じるものの、テンポがゆっくりめの長編だっただけに、もっとハッキリした決着が欲しかったというのが正直な気持ちです。
💭 前作からの回収:松倉の選んだ答え
前作の終わりで気になっていた、松倉が選んだ答えを知ることができたのは嬉しかったです。
今後も松倉が例の危ない金に手を付けないとは限りませんが、とりあえずバイトを選んだこと、それについて堀川と松倉が多くを語らず、こぶしを合わせるだけで終わったのも良かったです。
あっけなく、手短に。でも二人にはそれで十分というバディ感が良かったです。
これが知りたくて読んでたところがあるので、満足。
💭 主要三人の関係性
主要キャラクター三人がみんな良かったです。
高校生とは思えない語彙でやり取りをする一方で、タクシーの乗り方を知らなかったりする子供らしさもある。
三人とも嘘をついていて、互いを完全に信頼しきっているわけではないまま事件解決に向けて動きますが、最後にはそれぞれが自分の守りたいもののために動く、依存しすぎない関係性がこの作品ならではだと感じました。
💭 いまだ謎に包まれた堀川次郎
〈図書委員〉シリーズ第2作目にもかかわらず、堀川次郎についての話はいまだにありません。
主人公で語り手であるのに、もはや一番ミステリアスなキャラクターになっているように感じます。
親にあまり関心を持たれていないような描写がうっすらあるかな?くらい。
あと前作のプールエピソード。
この三人をもっと見たいので、ぜひシリーズが続いてほしいです!お願いします!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。



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