「謎解きより、祖父と孫の絆に胸が熱くなった。」
小西マサテルさんの『名探偵のままでいて』を読んだ感想をまとめました。
レビー小体型認知症を患う祖父が、孫娘・楓の話を聞くだけで身の回りの謎を解き明かしていく本作は、鋭い謎解きよりも、家族の絆や人間ドラマに引き込まれる読書体験でした。
この記事ではネタバレなしのレビューと、折り畳み式のネタバレあり感想の両方を掲載しています。
この記事で分かること
・『名探偵のままでいて』のネタバレなしレビュー
・読んで感じた良かった点・気になった点
・ネタバレありの感想(後半に掲載)
⭐⭐⭐⭐☆(4.0/5)
⭐ 結論
謎解きの鋭さよりも、祖父と孫娘の温かい絆に引き込まれる一冊でした。
👍 こんな人におすすめ
安楽椅子探偵ものや、キャラクター重視の温かい人間ドラマ、古典ミステリへのオマージュを楽しみたい方。
⚠️ 注意点
緻密なロジックを重視する本格ミステリーを期待すると、少し物足りなく感じるかもしれません。また「日常の謎」ジャンルとして紹介されることもありますが、実際には殺人事件も扱う作品です。
💭 読了後の第一印象
今回読んだのは、小西マサテルさんの『名探偵のままでいて』です。
きっかけは、「殺人事件の起きないミステリー」というアンソロジー短編集に収録されていた第1章を先に読んだことでした。
そこで感じた雰囲気が気に入り、単行本を購入しました。
読み終えての率直な感想は、自分の家族や友人を大切にしようと、あらためて思わされるような、雰囲気の良い作品だったということです。
「緻密なロジックを重視する本格派」というよりは、「温かい物語や魅力的なキャラクター、古典ミステリへのリスペクトを楽しめるエンタメ好き」に向いている作品だと感じました。
📖 ネタバレなしレビュー
あらすじ
主人公は、小学校教師の楓(かえで)です。
彼女には、かつて校長として慕われていた聡明な祖父がいますが、71歳になった今、幻視や記憶障害を伴う「レビー小体型認知症」を患い、介護を受けながら一人で暮らしています。
楓は仕事帰りに祖父のもとを訪れ、身の回りで起きた不可解な出来事を話して聞かせます。
すると祖父の知性はかつての鋭さを取り戻し、部屋から一歩も出ることなく、楓の話だけを頼りに真相を導き出す「安楽椅子探偵」として活躍します。
お気に入りのタバコを所望し、仮説を立てることを「物語を紡ぐ」と表現するのが、祖父の推理の決まりです。
物語は連作短編集の形式をとっており、古本に挟まれていた訃報記事の謎や、居酒屋のトイレで起きた事件など、最初は日常的な謎から始まりますが、次第に楓自身の過去に関わる重大な事件へと繋がっていきます。
👍 良かったところ
斬新なキャラクター設定と安楽椅子探偵
レビー小体型認知症を患う祖父が探偵役という設定が非常にユニークだと感じました。
認知症特有の症状である「幻視」を推理に結びつける手法が斬新で、部屋から一歩も出ずに話を聞くだけで謎を解く姿は、往年の名探偵を彷彿とさせます。
口調や佇まいもどこかホームズのようで、知的でダンディな雰囲気がありました。
推理を披露するときの「煙草を一本くれないか」という決め台詞も、印象的でかっこよく感じました。
読みやすさと構成の分かりやすさ
文章が軽やかで難読漢字も少なく、連作短編の形式をとっているため、ミステリ初心者でもサクサク読めそうです。
改行が多めなのは読みやすい一方で、私には箇条書きのように見えてやや違和感がある部分もありました。
事件によっては見取り図が添えられていることもあり、状況が分かりやすいのも良かったです。
温かい人間ドラマとキャラクターの魅力
祖父と孫娘である楓の、深い絆と互いを思いやる関係性には、切なくも胸を打たれました。
物語の序盤では、登場人物たちのキャラクターがどこか鼻につくと感じていましたが、読み進めるうちに、それぞれの関係性がどう変わっていくのか気になっていきました。
古典ミステリへのオマージュ
エラリー・クイーンやアガサ・クリスティなど、古典ミステリへのオマージュや引用が随所に散りばめられており、ミステリ好きとしては嬉しい要素でした。
🤔 気になったところ
「このミス」大賞作としての物足りなさ
トリックや謎解きに関しては、不公平さや強引さを感じる部分もありました。
「このミステリーがすごい!」大賞受賞作という看板に対して、やや物足りなく感じたというのが正直なところです。
重厚なロジックよりも、キャラクター小説やハートウォーミングな物語としての側面が強い作品だと思います。
ジャンル表記による誤解
本作は殺人事件を扱う内容ですが、「殺人事件の起きないミステリー」に収録されていたり、「日常の謎」ジャンルとして紹介されていたりすることがあります。
私自身、そのイメージで読み始めたので少し驚きました。これから読む方は、その点だけ頭に入れておくと良いかもしれません。
⭐ 総評
一言でまとめるなら、
「謎解きの鋭さより、祖父と孫娘の絆で読ませる、温かい安楽椅子探偵ミステリー」でした。
ロジックの緻密さという点では強引さを感じる場面もありましたが、認知症を患う祖父が探偵役という斬新な設定と、楓との温かい関係性には、最後まで引き込まれました。
タイトルの『名探偵のままでいて』には、病が進行しても大好きな祖父には聡明な「名探偵」であってほしいという楓の願いが込められているように感じ、読み終えたあとにじんわりと胸に残る作品でした。
続編もあるとのことなので、ぜひ読んでみたいと思っています。
⭐ 評価
| 項目 | 評価 |
|---|---|
| 読みやすさ | ★★★★★ |
| ミステリー要素 | ★★☆☆☆ |
| キャラクター | ★★★★★ |
| 感動・温かさ | ★★★★☆ |
| 続きが気になる度 | ★★★★☆ |
総合評価:⭐⭐⭐⭐☆(4.0/5)
📚 こんな人におすすめ
✅ 安楽椅子探偵ものが好きな方
✅ 家族の絆を描いた温かい物語が好きな方
✅ 古典ミステリへのオマージュを楽しみたい方
✅ 読みやすい連作短編ミステリーを探している方
✅ 実写映像化されてる作品が好きな方
気になった方はこちらからチェックできます。
⚠️ ネタバレあり感想
※ここから先は『名探偵のままでいて』の結末や核心に触れる感想です。
未読の方はご注意ください。
キャラクターの印象の変化、告白シーン、ラストについてなどを語っています。
💭 キャラクターへの印象が読み進めるうちに変わった
最初は、主人公・楓の性格が少し鼻につくと感じたり、四季のキャラクターが嫌な奴に見えたり、岩田も空気が読めない強引な人物だと思っていました。
しかし読み進めるうちに、3人のいい関係性が見えてきて、最終的には今後この関係がどうなっていくのか気になる存在になっていました。
💭 四季の告白シーンが好き
四季が楓に告白するシーンが、なんとなく好きでした。
「僕は初めて逢ったときから、ずっと、あなたのことが好きです」
楓が自分の過去を話したあと、二人で『たんぽぽ娘』のセリフを言い合ってから、シンプルな告白に繋がる流れが良かったです。
初対面のときはめっちゃ感じが悪かったのに、実は一目惚れだったという事実には、不覚にも少しキュンとさせられました。
まだ楓がどちらと結ばれるかは分かりませんが、四季と岩田のどちらかを選ぶなら、四季とくっついてほしい!
💭 祖父の柔術と幻視を使った推理
クライマックスでは、楓を狙うストーカーの正体が、27年前に楓の母を殺害した犯人であり、祖父の介護ヘルパーだったことが明かされます。
祖父は認知症の症状である幻視を逆手に取った推理で犯人を特定し、さらにかつて嗜んでいた柔術で自ら犯人を組み伏せて楓を救い出す場面には、探偵という枠を超えた頼もしさを感じました。
おじいちゃんかっこよ。
💭謎解きにやや強引さを感じた
たとえば、首に汗をかいていたから麻薬中毒者、両手で口を押えたからアルコール中毒者、といった推理は、論理的な謎解きというより連想ゲームに近い印象で、「ウミガメのスープ」のようだと感じました。
そういうゲームだと捉えれば、それはそれで楽しめる部分ではあります。
重要な情報を主人公が別のこと考えてて普通に聞いてなかったシーンにはさすがにツッコミたくなりましたが。
💭 「女か虎か」になぞらえたラストの余韻
物語のラストは、作中でも言及されるフランク・ストックトンの「女か虎か」になぞらえたリドル・ストーリーの形式になっており、楓が「好きな人ができた」と祖父に告げるものの、その相手が誰かは明かされないまま幕を閉じます。
オシャレで余韻のある終わり方だと感じ、続編もぜひ読んでみたいと思いました。
実写向けのミステリーだとも思うので、ドラマの方も見てみようかなと考えています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。



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